デバイスレビュー

サウンドデバイス市場に殴り込んだ老舗の意欲作「Sennheiser GSX 1000」

リファレンスヘッドフォンの老舗メーカーとして有名なゼンハイザー(SENNHEISER)が贈る、ゲーマー向けUSBサウンドデバイス「GSX 1000」Sennheiser Binaural Rendering Engineという独自のサラウンドシステムを引っ提げ、サウンドデバイス市場にも殴り込んできた老舗の意欲作のレビューしたい。

基本情報:ドライバレスで直感的な操作ができるデザインを採用

ゼンハイザーというとリファレンスヘッドフォンやスタジオ向けマイクロフォンなどにおいて高いシェアを誇るドイツのオーディオメーカーで、ゲーミングデバイス市場においても、黎明期より一般向けに発売されていた「PC161」などのヘッドセットが人気を博し、2014年頃からは「GAME ONE」「GAME ZERO」といった商品で正式にゲーミングデバイス市場へ参入しているため、聞き馴染みのあるメーカーだろう。そんなゼンハイザーが贈る、同社初めてのゲーマー向けUSBサウンドデバイスが、今回レビューさせていただくGSX 1000だ。

まず目を引くのは、100mm四方のシンプルかつミニマルにまとめられた小型の筐体だろう。GSX 1000はドライバレスのプラグアンドプレイ設計となっており、ほぼ全ての設定を筐体上で行えるようになっている。
サウンドデバイスに限った話ではないが、近年はドライバーを必要としないプラグアンドプレイ設計のゲーミングデバイスが増加傾向にある。そのほうがプレイする場所や環境が変わりやすいプロ競技シーンやオフラインイベントにおいて、持ち運びやセッティングが容易な上、なによりプレイする環境に左右されず常に同じ動作設定でプレイすることができるからだ。GSX 1000も、その流れを忠実に汲んだかたちだ。

また、GSX 1000の姉妹品としてGSX 1200 PROという製品が存在し、こちらはGSX 1000と基本スペックは変わらないものの最大8人までのデイジーチェーン接続で遅延のないデバイス間の通信が可能な、よりプロシーンを意識した製品となっている。このようなバリエーションが存在しているあたりからも、この製品シリーズとゼンハイザーのゲーミング市場への本気度が伺える。

操作/設定:筐体上で完結した設定項目。その分出来ることは少ない

次に操作周りを見ていこう。まず、上面に大きく配置された銀色のダイヤルは出力ボリューム調整用で、Windows側のボリューム設定と連動して操作することが出来る。現在のボリュームの値は筐体のLEDタッチパネルとWindowsのオーバーレイの双方で確認することが出来る。入力ボリューム調整用のダイヤルは筐体右側面に配置。こちらはWindowsとは連動しておらず、独自に調整することになる。インターフェイスは全て背面にまとめられており、パソコンと接続するためのMicro-USB、ヘッドフォン用およびスピーカー用の2系統の出力、マイク用出力。電源はUSBバスパワー供給なので、別途ACアダプターなども必要ない。


上面のタッチパネルはボリューム値の表示の他、6つの機能の切り替えをすることが出来る。筐体上面四隅にはこの6つの設定項目をプリセットとして登録・読み込みをするタッチセンサーが搭載されている。タッチパネルの機能は画面左上から時計回りに、ヘッドフォンとスピーカーのサウンド出力先の切り替えを行えるSwitch between sound systems、イコライザープリセットをフラット・ゲーム・音楽・映画の4つから選択できるEqualizer settings、サラウンドシステムの出力バランスをニュートラル・前方・後方から選択し調整できるSurround Amplification、ヘッドフォンの出力チャンネル数を2.0ch・7.1chで切り替えができるSound Mode、マイク入力をヘッドフォンから確認できるマイクモニタリング機能のSidetone Level、サウンド出力の反響効果を3段階で調整できるReverb。設定項目はこの6つのみだ。

イコライザーは既に設定されたプリセットのみしか使えず、ユーザーが自由にプリセットを作成するようなことはできない。FPS/TPSゲーマーの場合は、高音を強調し足音や銃声が聞き取りやすくした”ゲーム”プリセットが既に存在するのでそちらを使用すれば問題ないとは思うが、自分の聴き取りやすい音を作るために極端なイコライザー設定をしているようなユーザーとしては痛手だろう。しかしながら、GSX 1000の設計コンセプトを考えると致し方なしか。逆に筐体上に機能を集約しているメリットとしては、サウンド出力と出力チャンネルの切り替えを筐体上でワンタッチで行える点。普段はスピーカー/2.0chでネットサーフィンや動画鑑賞をしているが、ゲームをするときだけヘッドセット/7.1chにしているなんていうユーザーはその操作が卓上で簡単に行えるのは利便性はいいだろう。

音質:サラウンドの新たな選択肢となりうるSennheiser Binaural Rendering Engine

この商品の一番のセールスポイントは、ゼンハイザー独自のサラウンドサウンドシステムであるSennheiser Binaural Rendering Engineを採用している点。名称から推測すると、人間の頭部や耳の構造を模したダミーヘッドを用いて録音するバイノーラル録音(Binaural recording)と似たようなリアリティある音声を出力するため、デバイス側でリアルタイムで演算を行ってくれるシステム…と解釈していいだろう。ゼンハイザーはGSX 1000のことをバイノーラルオーディオアンプと呼称しており、この辺りからもバイノーラルサウンドがこの製品のキモであることは間違いないだろう。

技術的な検証などは出来ないのであくまで消費者目線からの使用感としてお伝えするが、実際に「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」「Fortnite」といったバトルロワイヤル系シューターでSennheiser Binaural Rendering Engineを試してみたところ、まず他のサラウンドサウンドシステムと違って前方向の定位感が非常にはっきりしている点が印象的だった。他社製品に採用されている「DTS Headphone:X」「Razer Surround Pro」などは、サラウンド技術としては非常に秀でたものがあるものの、前方向の定位感が甘く、音がド中央で鳴っているような聞こえ方がするものが大半だった。しかしながら、このSennheiser Binaural Rendering Engineは前方向の音をしっかりと前方向として認識することが出来る。この辺りは、まさしく人間の耳に合わせたバイノーラルレンダリングということで、他のサラウンド技術とは一線を画している。

また、前方向だけでなく全ての音の方向において「鳴った方向を鳴った方向として認識しやすい」印象で、実際に音が鳴っている方向と自分の感覚のズレが少ないというのが実際に聴いてみたイメージだ。新出のサラウンドサウンドシステムながら他のサラウンドシステムと比較しても遜色ないサラウンド体験を実現しており、今後のサウンドデバイス市場においてバイノーラル技術というものが大きなキーパーソンになることを予感させられる出来だ。

まとめ:完成度には疑いの余地なし。価格と自由度の低さが気にならなければ「買い」

音響業界の老舗であるゼンハイザーが贈る”バイノーラルオーディオアンプ”は、ゲーミングサウンド市場では現時点で唯一となるバイノーラル技術を採用したSennheiser Binaural Rendering Engineは唯一無二であり、流行りのプラグアンドプレイ設計を取り入れた直感的かつ簡単な操作性はゲーミングデバイスにありがちなゴチャゴチャとした煩わしさを感じさせることがなく、非常に高い完成度でまとめ上げている製品だ。流行りを取り入れたことによる設定の自由度の低さと、実売価格で2万円弱という値段の高さは確かに気にはなるものの、それらの懸念点を鑑みた上でも、この製品は現在のゲーミングサウンドデバイス市場におけるフラグシップであると考える。この記事を読んで興味を持った人は、是非一度試してみてほしい。きっと後悔はしないだろう。